


ウェストサイドで産声を上げた
ヒップホップ・カルチャー=ウェッサイ
“ウェッサイ”とは、アメリカのロサンゼルスを中心とする西海岸=ウェストコーストで生まれたヒップホップ・カルチャーのこと。長らくヒップホップの主流と見なされてきた米東海岸のニューヨークに対する“西側=West Side”のオリジナリティを主張するウェッサイ・シーンは、音楽性はもちろん、ファッションやライフスタイル、価値観など様々な面で独自のカルチャーを形成している。
ウェッサイ・シーンのパイオニアと言えば、Dr. DreやIce Cube、Eazy-Eらが在籍した西海岸の伝説的ヒップホップ・クルー=N.W.A.だ。1980年代中頃から活動した彼らの、ウェストコーストの人々の実情をリアルに描いた“ギャングスタ・ラップ”は、ウェッサイ・シーンの独自性を世に知らしめる存在となった。その後、N.W.A.を脱退したDr. Dreのアルバム『Chronic』やSnoop Dogの『Doggystyle』に代表される“Gファンク”と呼ばれるムーブメントが90年代に起き、ウェッサイ・シーンが再び大きな注目を集めることとなった。中でも、25才の若さで夭折したラッパー=2PACは、ウェッサイ・シーンのカリスマとして、今なお高い人気を保っている。
そして2005年、新世代ウェッサイを代表するアーティスト=THE GAMEが『The Documentary』でデビューするや、再び大きなムーブメントとなった。



ウェストサイドで産声を上げた
ヒップホップ・カルチャー=ウェッサイ
ウェッサイを特徴づけているのは、電子音を多用したラグジュアリーなサウンドと、メロディアスなフローを持ったラップ。西海岸の陽気な気候を感じさせる開放的なトラックが、ウェッサイの大きな魅力になっている。また、日々の生活を生々しく描いたリリックも、ウェッサイには欠かせない。ニューヨーク=東側に対する“西側=West Side”として自らを位置づけするウェッサイは、そのためか地元への愛情を強調することが多い。リリックにもウェッサイの固有名詞がよく使われている
また、音楽性と同じように、洋服やアクセサリー、クルマなどもウェッサイ・カルチャーを語る上で欠かせないファクターだ。ワークウエア・ブランド「Dickies」のアイテムや「New Era」のキャップ、そして首から下げたロゴの大きなネックレスが、ウェッサイの基本的なファッション・スタイル。そしてシボレー・インパラやキャディラック・デビルなどの古く大型のアメリカ車をカスタムした「ローライダー」と呼ばれる車高の低いクルマも、ウェッサイ・カルチャーを代表するアイテムといえる。
アメリカのウェッサイのアーティストたちの共通点は、強い「成り上がり」マインドだ。貧しいストリート出身者の多かったウェッサイ・シーンでは、豪華なジュエリーを身にまとい、美しい女性を助手席に乗せて高価なローライダーを乗り回すことが、いわば成功者のステータスとされているのだ。





大きな音楽ムーブメントへと成長を遂げた、
ジャパニーズ・ウェッサイ
アメリカのウェストコーストで発生したウェッサイのムーブメントはいつしか太平洋を越え、日本の音楽シーンにも根付いた。日本におけるウェッサイ・シーンの基盤を形成したのは、1989年より活動を開始した横浜のDS455や、名古屋のW.C.C.を中心としたヒップホップクルーやそのメンバーでもあるMr.OZなどだ。特に今年で活動20周年を迎えるDS455は、日本におけるウェッサイ・シーンのパイオニアともいえる存在。また、横須賀のBIG RON札幌のHOKTといったアーティストが、地域に根ざしたジャパニーズ・ウェッサイ・シーンの形成に大きく貢献してきた。さらに仙台や福岡、大阪などでも、独自のウェッサイ・シーンが形成されている。
それぞれの都市では新しいアーティストも登場し続けており、独自のサウンドを特徴とする名古屋を中心に活動しているAK-69をはじめ、様々なアーティストたちが台頭してきている。
アメリカの西海岸ヒップホップの影響を受けて誕生したジャパニーズ・ウェッサイも、地元や仲間とのつながりを大事にするアティチュードを持っている。各都市のクラブやショップなどに各地域を代表するクルーが集結し、自主イベントを行なったり、コンピレーション・アルバムをリリースしている。近年ではこうした活動が身を結び、各都市で巻き起こったウェッサイの波が合流する場面も増え、日本の音楽シーンを飲み込む巨大なムーブメントへと成長しつつある。
実力派アーティストが次々と登場するジャパニーズ・ウェッサイ・シーンから、当分目が離せない。
Text by blueprint
