オペラを下敷きにしたミュージカル作品

近年ますます高まるミュージカル人気。人気のあのミュージカル作品は、実はあの有名オペラが元ネタ?!
また、同じ原作を題材にしたものを見比べてみるのも面白いですよ。

目次

「蝶々夫人」→「ミス・サイゴン」

着物の女性

G.プッチーニ作曲の、オペラ「蝶々夫人」。
明治時代の長崎が舞台。アメリカ軍士官のピンカートンの現地妻としてお金で買われた蝶々さんだが、それは正式な結婚だと信じ、帰国した彼の帰りを待ち続ける。しかし数年後、日本に戻ってきた彼の傍らにはアメリカ人の妻が…。
すべてを悟った彼女は、子供の未来のため、自死を選ぶ。
長崎のグラバー園で、「蝶々さんを演じた三浦環の像」などを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
日本人としては、舞台で「外国人から見た日本」を観るのも興味深い、人気オペラ作品のひとつです。

そんな有名な「蝶々夫人」を下敷きに作られたミュージカルが「ミス・サイゴン」。

1989年にロンドンで生まれたこの作品は、日本でも1992年に東京の帝国劇場で初演され、当時はヘリコプターが飛ぶ大がかりな装置や、本田美奈子さんの主演、初演から今もなお演じ続けている市村正親さんの演技などが話題となり、今も再演が繰り返されている大人気作品で、2022年の夏にも上演が発表されています。
                        
→ミュージカル「ミス・サイゴン」2022年の公演情報はこちら

ミュージカルでは、舞台は明治の長崎からベトナム戦争時のバンコク・ホーチミンへと移され、
「日本人女性とアメリカ人男性」から、「ベトナム人女性とアメリカ人男性」のお話になりました。
ベトナム戦争は【1955年~1975年サイゴン陥落】と、かなり近代の史実であるため、明治が舞台の蝶々夫人よりはるかに生々しく、今現在も残る様々な社会問題までが浮き彫りになります。戦争の悲劇ではありますが、「現地妻」といった設定が「女性軽視」と不快に感じる方もいるかもしれませんが、目を背けてはならない歴史上の事実でもあるのです。

オペラでの「蝶々さんとピンカートンの愛の二重唱」、蝶々さんがピンカートンを待ち続けて歌う「ある晴れた日に」
そして自死を決意して歌う「可愛い坊や」は、ミュージカルでも「世界が終わる夜のように「今も信じてる」
「命をあげよう」とそれぞれ同じシチュエーションで歌われます。

細かな人物像や心情、人間関係や行動意図などは、実はオペラとミュージカルでは少し変わっていますが、どのように変わっているのか見比べるのも、楽しみ方のひとつです。

管理人RUKA

イタリア人のプッチーニが描いた「蝶々さん」という日本女性。
美しくて悲しくて、日本人なら一度は絶対見てほしいオペラだよ!

モグちゃん

ミュージカルは日本語で見れるし、ダンスや歌がすごい迫力なんだ

パンクロー

パンクローはアメリカンドリームのシーンが大好き!
(唯一ホッとできるシーンかも…)

「ラ・ボエーム」→「RENT」

これまたG.プッチーニ作曲の、オペラ「ラ・ボエーム」はミュージカル「RENT」になりました。

「ラ・ボエーム」は、19世紀のパリに生きる貧しい芸術家の卵の若者たち(=ボヘミアン=フランス語で「ボエーム」)の、
画家の卵ロドルフォと、お針子ミミの恋物語。

「RENT」は1989年のニューヨークに舞台を移し、LGBTや薬物中毒など、かなり過激・現代的な設定へおきかえられたロック・ミュージカルとして、アメリカのオフブロードウェイで誕生後、世界中で上演される人気作品です。
日本でも1998年以来、再演が続く人気演目ですが、音楽がロックであることから、ミュージカル俳優だけではなく、ロック歌手やボーカリストも多く起用される異色の作品です。

オペラ「ラ・ボエーム」も、抒情的な音楽と切ない恋愛物語で、オペラ作品の中でもかなり人気の演目、世界中で最も上演回数の多いオペラ作品のひとつです。声楽を習い始めたばかりの若いソプラノがまず歌いたがるのも、ミミの歌う「私の名はミミ」ですし、テノールも3大テノールパヴァロッティの名唱で有名な「冷たき手」に憧れます。
お客さんも歌手も「ラ・ボエーム」は本当にみんな大好きですね。

その人気はミュージカルになっても変わらず、「RENT」は若者の夢と未来に寄り添う作品テーマはもちろん、名曲「seasons of love」を筆頭に、ジョナサン・ラーソンの楽曲も人気を集め、世界中に熱狂的なファンを持ち、映画化もされています。とにかくエネルギッシュで、若さゆえの過ちや情熱・友情・愛が溢れる舞台。
オペラは悲劇感が強いですが、ミュージカルではもっと前向きで未来への希望を感じることができます。

モグちゃん

RENTは若者には絶対見てほしい!

パンクロー

映画でも見れるよ!超ロック!

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U-NEXTで配信中! 31日間お試し無料!

管理人RUKA

ボエームはオペラ初心者が見ても分かりやすい恋愛劇。
2幕のクリスマスのシーンは華やかで素敵♪
冬に見るのがおススメ!

その他・オペラと関連のあるミュージカル作品

この2つ以外にも、オペラと関連していたり親和性のある作品はたくさんあります。例えば…

ミュージカル「モーツアルト!」

あの天才作曲家・W.A.モーツアルトが主人公の、ウィーン発のミュージカル。
以前はミュージカルといえばアメリカのブロードウェイ、そして「CATS]や「オペラ座の怪人」で有名なアンドリュー・ロイド・ウェーバーに代表されるイギリス・ロンドン発のミュージカルが主流でしたが、近年はこの「モーツアルト!」や「エリザベート」などのウィーンミュージカルも人気があります。

モーツアルトは器楽曲はもちろん、「フィガロの結婚」や「ドン・ジョバンニ」などの優れたオペラも多数残していますが、モーツアルトの生涯を描いたこのミュージカルでは、オペラ「魔笛」が出てきます。

ミュージカル「アイーダ」

イタリアを代表するオペラ作曲家・G.ヴェルディのオペラ「アイーダ」。
古代エジプトが舞台で、「凱旋の場」で演奏される「凱旋行進曲」は、サッカー日本代表の応援歌にも使われています。
馬が出てきたり多数のダンサーが出演したりと超豪華絢爛な舞台は、劇場のこけら落とし公演など祝祭的な機会に上演されることが多いグランドオペラです。

このオペラを元に、ディズニーが制作したのが、ミュージカル「アイーダ」。
日本では2003年に劇団四季が日本初演しています。
2012年を最後に上演されていないので、ファンの間では再演が待ち望まれている演目です。
宝塚でも「王家に捧ぐ歌」というタイトルで上演されています。

ミュージカル「ラマンチャの男」

これはセルバンデスの小説「ドン・キホーテ」をミュージカルにした作品ですが、同じ原作を題材として
オペラではマスネ作曲の「ドン・キショット」(ドン・キホーテのフランス語読み)があります。
「ドン・キホーテ」はバレエが有名ですね。日本が誇る天才バレエダンサー熊川哲也さんの若き日の「ドン・キホーテ」のバジルは世界の至宝です!

ミュージカル「ロミオとジュリエット」

こちらもシェイクスピアの同名戯曲が原作ですが、オペラでは2作品あります。
グノー作曲のフランスオペラ「ロミオとジュリエット」と、もう1作はベッリーニ作曲のイタリアオペラ「カプレーティ家とモンテッキ家」。グノーの方がロマンティックで、ベッリーニの方はシリアスな仕上がりとなっています。

まとめ

その他、ビゼー作曲のオペラ「カルメン」は、ミュージカルでは「カルメン」「ロマーレ」などいくつかのプロダクションがあったり、またバーンスタイン作曲「キャンディード」は、限りなくオペラに近いミュージカルです。

オペラは16世紀末のイタリア・フィレンツェに起源を持ち、主に王侯貴族の娯楽として発達してきたもの
ミュージカルは19世紀にアメリカで誕生し大衆のエンターテイメントとして発展してきたものですが、そのルーツがオペラやオペレッタにあることは明確で、オペラの子どもや孫みたいなものなのです。
一番の違いは歌唱法・発声法ですが、どちらにもそれぞれの良さがありますよね。

同じ題材でも、それぞれの特色を生かした表現や構成になっていて、両方見比べることで、原作やそれぞれの良さをさらに深く理解できるようになります。

最近は、コンサートのみならず、こうした舞台作品のライブ配信も増え、ますますエンターテイメントを身近に楽しめるようになりました。今まで未体験だったジャンルや演目も気軽に楽しむことができるので、興味を持った作品があったらぜひ鑑賞してみてください。


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